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飼料
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- 【要約】
【課題】携帯及び運搬が極めて容易であり、放牧牛の管理に不慣れな管理者においても牛を簡単に呼び寄せたり、捕獲を補助したりすることが可能で、牛が採食しやすい形状を有し、また、放牧牛に不足する栄養分の補給が可能な飼料を提供する。
【解決手段】牛用の固形の飼料1であって、断面が弧状で半円筒形状又は円筒形状の外周面2aが形成され、その外周面2aに対して垂直方向にフィン状の突部3,4,5が少なくとも1つ周設され、飼料1の長手方向の長さが7cmから9cmの範囲内であるものである。
- 【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
牛用の固形の飼料であって、断面が弧状で半円筒形状又は円筒形状の外周面が形成され、その外周面に対して垂直方向にフィン状の突部が少なくとも1つ周設されることを特徴とする飼料。
【請求項2】
前記飼料の長手方向の長さが7cmから9cmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の飼料。
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- 【考案の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本考案は、放牧牛を管理する際に、呼び寄せるための餌付け用に給与する固形の飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、耕作を放棄する農用地が増加しており、これらを放牧地として活用する繁殖経営は繁殖牛を飼育管理するための負担を軽減する経営方法として知られるようになってきた。この繁殖経営では、繁殖牛を放牧させている間は、牛の世話が楽になったり、餌代や敷料費が削減できたり、また、耕作放棄地の除草ができたりするという利点がある。そして、これらの取組は、畜産農家から牛の飼養の経験のない耕種農家等へ広がりつつある。放牧を円滑に行うためには、管理者は、放牧地の移設のために牛を捕獲したり、牛に出来るだけ接近して健康状態を観察する必要がある。また、放牧する牛にはおとなしい妊娠牛を使用するが、放牧地の草を中心とした餌では栄養が偏るので栄養補給のために、重量のある飼料を運搬して給与する必要もある。
しかしながら、このような作業は、主に作業を担う高齢者や女性や、放牧牛の管理に不慣れな耕種農家には困難なものであった。そこで、運搬が容易で、放牧牛を呼び寄せて捕獲し、その後の観察等を補助するような飼料が求められている。
これまでにも家畜等の飼料に関してはいくつかの形態が考えられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「牛用のブロック状に固化成形された餌」という名称で、必要な栄養素を全体にバランス良く採食できる牛用のブロック状に固化成形された餌に関する発明が開示されている。
この特許文献1に開示された発明は、繊維と穀類とミネラルを含む飼料と、平均的な長さを10mm以上とする長繊維粗飼料とを含み、所定の圧力で加圧成形してブロック状に固化成形されるものであり、全体の形状が方形状又は円柱状で、最長部分の長さが60mm以下であるものである。
そして、このブロック状の餌は必要な栄養素をバランスよく含有し、また、嗜好性の良いものと悪いものとを混合しているので、動物の選別による残食がなくなるとともに、採食量が増加し、疾病や繁殖障害等を低減することが可能となる。また、産肉産乳繁殖等の動物の活性能力を向上させることができる。そして、餌組が極めて簡単であるので飼養管理が大幅に省力化することも可能であり、さらに、長繊維粗飼料を結合繊維として用いているので、餌としては不要なバインダーの添加を無くしたり減らしたりすることができ、安価で理想的な牛用の餌を実現することができる。
【0004】
また、特許文献2には、「家畜用固形舐食物」という名称で、高い圧力で圧搾成形に行っても欠損なく型抜き可能な家畜用固形舐食物に関する発明が開示されている。
この特許文献2に開示された発明は、直方体の三面が隣接する角部と二面が隣接する稜部を面取りしてなる形状に圧搾成形され、幅寸法及び奥行寸法が各々約16cmで、高さ寸法が約10cmに形成されるものである。また、円柱体の平面と曲面とが隣接する稜部を面取りしてなる形状に圧搾成形され、直径が約16cmで、高さ寸法が約10cmに形成されるものである。
したがって、家畜が舐食した際に崩れないような大きな圧力で圧搾成形を行っても、角部や稜部を面取りして形成しないので、通常欠損しやすいこれらの部分において不良が発生することなく、養生時間を必要としない高品質の家畜用固形舐食物を効率良く製造することができる。
【0005】
また、特許文献3には、「ゼリー状のペット用飼料」という名称で、幼年や老齢や病気等のペットが噛まないで、抵抗なしに快適に摂取できるゼリー状のペット用飼料に関する発明が開示されている。
この特許文献3に開示された発明は、ペット用飼料又はペット用飼料に適した食材を、破砕、片粉化、煮沸、搾汁等の調理加工手段によって、ゼリー状又はかゆ状の流動食状又はそれらに柔らかい固形物を混在した状態に設け、必要に応じてゼリー状化材を添加したものである。
したがって、幼年や老齢や病気等の理由で、歯がなかったり、歯が弱って噛めなかったり、消化がうまくできなかったりするような固形飼料が適さないペットに、ゼリー状のペット用飼料を与えることによって、これらのペットは舐めたり、すすったり、飲んだりして、噛まずに快適に摂取することができる。
【特許文献1】特開平11−56263号公報
【特許文献2】実用新案登録第3027638号公報
【特許文献3】特開2007−20448号公報
【考案の開示】
【考案が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来技術である特許文献1及び特許文献2に開示された発明及び考案では、いずれの飼料も略立方体状であり、工業的な大量生産には都合がよいものの牛の摂食のためには都合のよい形状ではなく、従って食べ難いという課題があった。また、手渡しで飼料を給与する場合においても適した形状ではないという課題もあった。
【0007】
また、特許文献3に開示された発明では、飼料の形態としてゼリー状を想定しているが、包装のため容器が必要になり、また、水分を多く含むために重量化するので、運搬して使用する用途には適さないという課題があった。
【0008】
本考案はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、携帯及び運搬が極めて容易であり、放牧牛の管理に不慣れな管理者においても牛を簡単に呼び寄せたり、捕捉を補助することが可能で、牛が採食しやすい形状を有し、また、放牧牛に不足する栄養分の補給が可能な飼料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の考案である飼料は、牛用の固形の飼料であって、断面が弧状で半円筒形状又は円筒形状の外周面が形成され、その外周面に対して垂直方向にフィン状の突部が少なくとも1つ周設されるものである。
このような構成の飼料によれば、断面が弧状で半円筒形状又は円筒形状の外周面は地面などの平面上では膨らみを形成するように作用する。また、外周面に対して垂直方向に周設されるフィン状の突部は、給餌前では放牧管理者の手によく馴染み、給餌の際には牛の舌に絡まって掛止するように作用する。なお、本願実用新案登録請求の範囲及び明細書における半円筒形状及び円筒形状は、それぞれ半円筒形状及び円筒形状に加えて、それぞれ略半円筒形状及び略円筒形状を含む概念であり、垂直方向も同様に垂直方向に加えて略垂直方向を含む概念である。
【0010】
また、請求項2記載の考案は、請求項1に記載の飼料において、飼料の長手方向の長さが7cmから9cmの範囲内であるものである。
このような構成の飼料においては、請求項1に記載の考案の作用に加えて、飼料の長手方向の長さは牛の口の幅と同寸法あるいは少し大きくなるようにして、牛の口に入れ易いように作用する。
【考案の効果】
【0011】
以上説明したように、本考案の請求項1に記載の飼料においては、固形であるので運搬が極めて容易であり、また、牛の口や舌の構造に適した立体的な形状によって牛は食べ易く、また、フィン状の突部は牛の舌に絡めて掛止し易く、一旦口の中に収めた後には滑り止めとしての効果を発揮することができるので落下防止となる。そして、断面が弧状で半円筒形状又は円筒形状の外周面が形成されるので、地面に落下した場合でも、地面に対して膨らんで浮き上がるので、牛が直接飼料を摂食することができる。
【0012】
また、本考案の請求項2に記載の飼料においては、飼料の長手方向の長さを7cmから9cmの範囲内に形成することによって、平均的な成牛の口の幅の寸法に合わせているので、牛が食べ易く、また、何度も口に運ぶ必要がないので、効率的に摂食できる。
【考案を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本考案に係る飼料の最良の実施の形態を図1乃至図4に基づき説明する。
図1は、本考案の本実施の形態に係る飼料の正面図であり、図2は、本実施の形態に係る飼料の背面図であり、また、図3は、図1中にA−A線で示された部分の矢視断面図である。
図1及び図2において、飼料1は、肉厚が略3mm〜10mm程度の半円筒形状であって、正面側には凸となる外周面2aが形成され、背面側には凹となる内周面2bが形成されている。そして、外周面2aには垂直方向に頂点から両側に放物線状の傾斜面を備えたフィン状の第1の突部3、第2の突部4及び第3の突部5が周設されている。これらの第1〜第3の突部3〜5の外周面2aからの高さは略3mm〜8mmである。
なお、飼料1の長手方向の長さは7cmから9cmの範囲内に形成されている。また、第1の突部3、第2の突部4及び第3の突部5は、飼料1の長手方向に対して均等に配置されている。これは牛の口や舌に掛止し易くするためであるが、特にこのように均等に限定するものではなく、適宜隣接する突部間に牛の口や舌に掛止可能な距離を空けておけばよい。なお、均等は均等に加えて略均等を含む概念である。
【0014】
また、図3において、飼料1の断面は弧状で半円筒状に形成されており、第1の突部3は外周面2aから突出して周設されていることがわかる。
なお、本実施の形態においては、第1、第2及び第2の突部3〜5は、それぞれ半円筒状の外周面2aの全周に亘って突設されているが、部分的に切れ目などを入れながら周設されるようにしてもよく、本願では周設とは、切れ目を含めて設けられることを含む概念である。
飼料1は、牛に給与するためのものであり、主材料として糖蜜又は味噌を用い、副材料として米ヌカを用い、結合材として薄力粉を用いて、これらの材料を混合して上述の形に型取り、天日乾燥した固形の飼料であり、重量は約30gである。
必要に応じて、例えば放牧牛の適正は栄養管理のために必要な栄養素を、この飼料に混ぜることで、確実かつ簡単に摂取させることが可能である。また、例えば妊娠牛に必要な栄養素や通常の飼料では不足する栄養素を特に混ぜて成形してもよく、栄養管理が効果的でかる容易となる。
従来の粉状の飼料をバケツなどに約1kg入れて、それを地面に置いて、放牧牛を呼び寄せていたのに対して、本実施の形態に係る飼料1では手渡しが可能であることから必要最低限の量で済むため大幅な軽量化が可能となり、また、固形であるので運搬が極めて容易となる。
【0015】
また、長手方向の長さが7cmから9cmの範囲内で平均的な成牛の口の幅に合わせてあるので、牛が一口で採食できて食べこぼしが出ない大きさになっているとともに携帯に便利な大きさである。そして、飼料1の外周面2aに設けられる第1の突部3、第2の突部4及び第3の突部5は、牛の舌上や口内で滑り止めとして作用し、牛が咀嚼する際に飼料1の落下を防止することができる。さらに、半円筒形状に形成されているので、地面に落下した場合や地面に置いておく場合のいずれでも、外周面2a及び内周面2bのいずれかが上方を向くことで地面に対して隙間を構成して、地面上で平坦になることなく、牛が牛自身の舌や口を使って採食することができる。
飼料1は縦長に形成されているので、一の端部を人間が持って、他の端部を牛の方へ差し出すことで、手渡しで給餌することも容易である。したがって、飼料1を管理者等が手渡しで給餌すれば、女性や高齢者あるいは飼養経験のない管理者でも牛を呼び寄せて近づくことが可能であり、牛の健康状態を観察したり、放牧場への円滑な移動を促すことが容易となる。
なお、本実施の形態では、フィン状の突部を3個設けて牛の口や舌に掛止容易なようにしているが、設置数は掛止の高い効果を得るためには複数個設けることが望ましいが、その数は特に限定されるものではなく、少なくとも1個設けてあれば掛止の効果は少なくとも発揮されるものである。また、本実施の形態では、飼料の断面形状を弧状で半円筒形状としたものを示したが、断面形状は、弧状で円筒形状であってもよく、その作用や効果は、前述した断面が半円筒形状のものと同等である。なお、円筒形状には、略円筒形状に加えて、円筒形状あるいは略円筒形状であるものの、連続した周面を備えることなく周方向に一部途切れを有しているものを含む概念である。
【0016】
次に、図4及び図5は、本実施の形態に係る飼料の試作品の写真である。
図4及び図5において、実際に試作した場合の飼料は、円筒形状から半円筒形状の立体形状で、外周面側が凸、内周面側が凹となり、外周面側には3個の突部が周設されており、上述のように牛が採食しやすい形状の形成を可能としていることがわかる。また、試作の飼料は、縦長に形成され、立体形状であるので、携帯しやすいとともに把持しやすく、放牧管理者が手渡しで牛に給与しやすい形状であるといえる。
図4は人間の手を用いて試作した飼料であり、指に巻くようにして作成されたことから飼料の断面が円筒形状となっているが、工業的に量産する場合には、例えば図5に示されるような半円筒形状のものが考えられる。円筒状でもよいが、牛の舌上や口中における掛止効果としては半円筒形状の方が望ましいと考えられる。
【0017】
続いて、形状について検討した結果について説明する。
牛に与える飼料として望ましい形状を検討するため、図6に示すような円形のセンベイ形状、三角形状及び笹の葉形状の三種類について採食試験を行った。それぞれの形状の飼料の大きさは直径5〜6cmである。試験の結果を表1に示す。
【0018】
【表1】
【0019】
表1に示すとおり、円形の飼料では落下率が13.3%と大きい。牛の口の構造は、上顎の切歯(前歯)がなく、さらに切歯と臼歯の間(歯槽間縁)が大きく空いており、直径5〜6cmの円形の飼料は咀嚼が難しく、丸呑みしそうになるため反射的に吐き出すような行動にも出てしまうためである。また、三角形状及び笹の葉形状のいずれも採食時の飼料の落下は無かったものの、採食は円滑に行われなかった。平面形状の飼料を採食するのは、切歯が上顎にないため、不利になるものと考えられる。
なお、表1中、採食率は採食頭数を試験頭数で除した率であり、落下率は飼料落下頭数を試験頭数で除した率である。
【0020】
次に、表1の結果を踏まえて、形状を立体的な半円筒形状で外周面に突部を備える形状に改良して採食試験を実施した。それぞれの飼料の大きさは7〜9cmである。試験の結果を表2に示す。
【0021】
【表2】
【0022】
表2に示す「ヒダ」とは、フィン形状の突部を意味しており、単に「ヒダ」記載されている突部の外周面からの高さは略7mmであり、「ヒダ小」と記載されている突部の高さは略3mmである。また、項目の内容は表1と同様である。
表2に記載されるとおり、採食率は80%以上と高く、採食時の飼料の落下はなかった。また、突部の大きさを小さくした場合は、牛が口の端にくわえた時に落下を確認したことから、突部を設けないと、牛の口から一層落下しやすい傾向にあることが推測された。但し、この落下は、表1に示した携帯用飼料採食試験において観測された円形のセンベイ形状で見られた吐き出しによる落下ではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上説明したように、請求項1及び請求項2に記載された本考案は、携帯及び運搬しやすく、牛の採食が容易で、放牧時にその管理者が牛を呼び寄せて牛の健康状態を観察したり、捕捉して放牧場へ移動させたりすることを可能とする飼料を提供可能であり、放牧場をはじめ、畜産関係施設等において利用可能である。
- 【登録番号】実用新案登録第3142401号(U3142401)
【登録日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【発行日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【考案の名称】飼料
- 【出願番号】実願2008−1942(U2008−1942)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】
【識別番号】391016082
【氏名又は名称】山口県
- 【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
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