適切な切削角度で切り易い包丁及び包丁の柄
- 【要約】
【課題】強く握っても親指や人差し指に圧痛が生じ難く、また、安定したグリップ感を得ることができ、しかも、グリップ状態において刀身の切線角度を正確かつ容易に覚知することができる適切な切削角度で切り易い包丁及び包丁の柄を提供する。
【解決手段】包丁刀身1の中子11を被覆固定せる握り柄2の柄元を角のない曲面状とすると共に、握り柄2の少なくとも下面側を、柄尻から柄元方向に面取りして平坦な角錐面を形成し、かつ、当該角錐面における包丁刀身1の切線部12と同側に位置する下面取り部21と隣向する斜面取り部22、及び斜面取り部22と上側周面部とは鈍角な稜角部Eを共有しており、この稜角部E・Eを当該握り柄2を握る使用者の手指が触れた際に、包丁刀身1の切削角度を認知せしめる触覚ラインとして機能させた。
- 【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
包丁刀身1の中子11を被覆固定せる握り柄2の柄元が角のない曲面状を成すと共に、握り柄2の少なくとも下面側が、柄尻から柄元方向にかけて面取りされて平坦な角錐面を成し、かつ、当該角錐面における包丁刀身1の切線部12と同側に位置する下面取り部21と隣向する斜面取り部22、及び斜面取り部22と上側周面部とは鈍角な稜角部Eを共有して連なり、この稜角部E・Eが当該握り柄2を握る使用者の手指に触れたときに、包丁刀身1の切削角度を認知せしめる触覚ラインとして機能することを特徴とする適切な切削角度で切り易い包丁。
【請求項2】
握り柄2の下面取り部21の両側に斜面取り部22・22を形成して、両側に形成された稜角部E・Eを手指の関節部で挟み込み可能としたことを特徴とする請求項1記載の適切な切削角度で切り易い包丁。
【請求項3】
握り柄2の上面側についても下面側と同様に柄尻から柄元方向に面取りして、平坦な角錐面である上面取り部23及び斜面取り部22’・22’を形成することにより、握り柄2の重心バランスを調整可能としたことを特徴とする請求項1または2に記載の適切な切削角度で切り易い包丁。
【請求項4】
包丁刀身1の中子11を締め込むための口輪3または包丁刀身1のツバ部14と前記握り柄2の接続端部の輪郭形状を合わせて、口輪3或いは包丁刀身1のツバ部14と握り柄2とを境界部が略面一となるように連結可能にしたことを特徴とする1〜3の何れか一つに記載の適切な切削角度で切り易い包丁。
【請求項5】
包丁刀身の中子を被覆固定するための握り柄2の柄元が角のない曲面状を成すと共に、握り柄2の少なくとも下面側が、柄尻から柄元方向に面取りされて平坦な角錐面を成し、かつ、当該角錐面における下面取り部21と隣向する斜面取り部22、及び斜面取り部22と上側周面部とは鈍角な稜角部Eを共有して連なり、この稜角部E・Eが当該握り柄2を握る使用者の手指に触れた際に、包丁刀身の切削角度を認知せしめる触覚ラインとして機能することを特徴とする適切な切削角度で切り易い包丁の柄。
- 【考案の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本考案は、包丁及び包丁の柄の改良、更に詳しくは、強く握っても親指や人差し指に圧痛が生じ難く、また、安定したグリップ感を得ることができ、しかも、グリップ状態において刀身角度の微調整を正確かつ容易に行うことができる適切な切削角度で切り易い包丁及び包丁の柄に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、一般家庭で使用される万能包丁などは、女性や高齢者でもしっかりと握れるように柄の下部が指にフィットする曲線状となったものが多いが、逆にこのような柄の形状では何処を握ってもピッタリ手に馴染んでしまうため、調理材料を切ろうとする際に包丁刀身の切線の角度が適切な方向に合わせ難い難点がある。
【0003】
一方、料亭や高級旅館の料理人が使用する包丁としては、柄の断面形状が楕円型や栗型(特許文献1参照)のものが主流であるが、高級な包丁には「八角柄」と呼ばれる八角柱状の柄も使用されており(図7参照)、このような八角柄を備えた包丁では、稜角に触れた指先の感覚で刀身角度の調整も行うことができる。
【0004】
ところで、手の指先の感覚神経には、親指と人差し指、中指、薬指の親指側半分を支配する正中神経と、小指と薬指の小指側半分を支配する尺骨神経とが存在し、普段我々の指先の感覚はこれらの神経を通って脳に伝わる刺激(電気信号)によって生じている。
【0005】
しかしながら、異なる神経から似たような刺激が同時に伝わった場合、脳での情報処理が複雑になって錯覚が生じ易くなるため、稜角の数が多い上記従来従来の八角柄の包丁では、親指から小指までどの指に対しても稜角の接触感が同じように脳神経に伝わって刀身の切線角度を緻密に判別することができない。
【0006】
また、上記八角柄に関しては、刀身の角度を変えて柄の握ったときに親指や人差し指に柄の稜角が押し当てられてこれらの指に圧痛が生じ易くなる欠点もあり、これが調理作業時において集中力が削がれる要因にもなった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平6―55116号公報(第2−4頁、第1−4図)
【考案の概要】
【考案が解決しようとする課題】
【0008】
本考案は、上記の如き問題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、強く握っても親指や人差し指に圧痛が生じ難く、また、安定したグリップ感を得ることができ、しかも、グリップ状態において刀身の切線角度を正確かつ容易に覚知することができる適切な切削角度で切り易い包丁及び包丁の柄を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本考案者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0010】
即ち、本考案は、包丁刀身1の中子11を被覆固定せる握り柄2の柄元を角のない曲面状とすると共に、握り柄2の少なくとも下面側を、柄尻から柄元方向に面取りして平坦な角錐面を形成し、かつ、当該角錐面における包丁刀身1の切線部12と同側に位置する下面取り部21と隣向する斜面取り部22、及び斜面取り部22と上側周面部とは鈍角な稜角部Eを共有しており、この稜角部E・Eを当該握り柄2を握る使用者の手指が触れた際に、包丁刀身1の切削角度を認知せしめる触覚ラインとして機能させた点に特徴がある。
【0011】
また、本考案においては、上記課題を解決するために上記手段に加えて、握り柄2の下面取り部21の両側に斜面取り部22・22を形成することにより、両側に形成された稜角部E・Eを手指の第一関節部および第二関節部で挟み込んでグリップの安定感を向上するという技術的手段を採用することもできる。
【0012】
更にまた、本考案では、上記課題を解決するために上記手段に加えて、握り柄2の上面側についても下面側と同様に柄尻から柄元方向に面取りして、平坦な角錐面である上面取り部23及び斜面取り部22’・22’を形成することにより、握り柄2の重心バランスを調整可能とするという技術的手段を採用することもできる。
【0013】
そしてまた、本考案においては、上記課題を解決するために上記手段に加えて、包丁刀身1の中子11を締め込むための口輪3または包丁刀身1のツバ部14と前記握り柄2の接続端部の輪郭形状を合わせて、口輪3或いは包丁刀身1のツバ部14と握り柄2とを境界部が略面一となるように連結するという技術的手段を採用することもできる。
【考案の効果】
【0014】
本考案では、包丁の柄において、柄の柄尻から柄元に向かい面取りを行って平坦な角錐面を成す下面取り部と斜面取り部を形成しているため、柄を握ったときに、下面取り部と斜面取り部、および斜面取り部と上周面部との間に形成される稜角部を、柄を握った小指や薬指の指先に当接させることができるため、その指先の感覚を頼りに刀身の切線角度を正確に認識して調理材料を適切な切削角度で切り易くなる。
【0015】
しかも、親指や人差し指、中指が当接することの多い柄元は角のない曲面状としていることから、正中神経からの刺激を減らして小指や薬指を通る尺骨神経からの刺激を相対的に増大させることができ、これによって指先の感覚に錯覚を生じさせずにより正確な微調整が可能となる。
【0016】
また、上記柄に設けた稜角部を小指や薬指の関節部で挟み込めばグリップを安定させることも可能であり、また、柄元に角がないことで、刀身の角度を変えて柄を握った際に親指や人差し指に角が当たって圧痛が生じるようなこともないため、調理作業の集中力が削がれる心配もない。
【0017】
したがって、本考案により、調理作業において緻密で正確な技巧が要求される包丁さばきを高い集中力をもって行えるグリップ機能に優れた包丁を提供できることから、本考案の実用的利用価値は頗る高い。
- 【登録番号】実用新案登録第3155818号(U3155818)
【登録日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【発行日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【考案の名称】適切な切削角度で切り易い包丁及び包丁の柄
- 【出願番号】実願2009−6680(U2009−6680)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】
【識別番号】509264051
【氏名又は名称】
- 【代理人】
【識別番号】100076484
【弁理士】
【氏名又は名称】戸川 公二
【識別番号】100148437
【弁理士】
【氏名又は名称】中出 朝夫
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