鏡面部材
- 【要約】
【目的】 金属特有の高硬度により接着剤のダク、基材のダクを最小限にし、高温加工後の熱収縮、熱膨張に起因する表面ダク、反りを高熱伝導性、耐熱性によりなくした、耐火性の優れた鏡面部材。
【構成】 表面に鏡面性を有する合成樹脂層1、金属層2、合成樹脂層3を順次積層してなることを特徴とする鏡面部材。
- 【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 表面に鏡面性を有する合成樹脂層、金属層、合成樹脂層を順次積層してなることを特徴とする鏡面部材。
【請求項2】 表面に鏡面性を有する合成樹脂層、金属層、合成樹脂層、無機質材料または木質材料からなる基材層を順次積層してなることを特徴とする鏡面部材。
- 【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案はビル、住宅の外壁、門、塀等の外装材、さらには浴室、トイレ等の内装材、システムキッチン、洗面化粧台、家具等の扉、テーブル、タイル等のインテリア部材及び自動車内装のインパネ部材等に関するものであり、特に耐水性の優れた鏡面部材である。
【0002】
【従来の技術】
従来、無機質材料、木質材料を基材とする表面が鏡面性を有する鏡面部材は意匠性を施したシ−ト基材にラミネートした後、ポリエステル、UV樹脂等を数回塗装、研磨を繰り返して得る塗装方法や、予め鏡面性を有する板、シート(フィルム)をラミネーター、ラッピング、ポストフォーム、真空プレス等で、接着剤の塗装表面性、ラミネ−ト温度等に注意して基材にラミネ−トする方法がある。
塗装方法は鮮影鏡面性を得る為には良い方法であるが、完全な鏡面性を得るために塗膜厚を厚くし、しかも塗装と研磨を数回繰り返すため、工程が多く、経済的でなく、樹脂の特性に起因する製品の色調管理が難しい。また、塗装ラインは自動化されているものの、この仕事は最近問題となっている3K職場、即ち(きつい、汚い、危険)な職場である。
【0003】
また、鏡面性を有する板、シート、フィルムを基材にラミネ−トする方法は工程が簡単な反面、せっかく鏡面性を有する板を使用してもラミネート等の加工時に無機質材料、木質材料のダク、接着剤のダク、さらには加工時の温度の影響を受け鏡面性が失われる場合が多い。それで、鏡面性を保持する為、板を予め研磨したり、接着剤のレベリング性、塗装に改良を重ね、また加工温度を最小限に止める工夫をしている。以上のように細心の加工方法により加工しても、接着剤の塗装レベリング性は基材の表面状態により(例えば、MDF、ケイカル板等の表面は微妙に表面状態が違っており、溶剤等の浸み込みが異なり、結果的に接着剤の凹凸が生じる。)接着剤の厚さの微妙なバラツキと、加工後の膨張率、収縮率などの差により完全に鏡面性を保持することができず、最終的には板厚を厚くする方法を取らざるを得ないが、板厚を厚くすると加工適性が悪くなる。
【0004】
以上まとめて述べると従来、■ 鏡面性を付与するために塗装と研磨を繰り返し、且つ塗膜厚を厚くして対応しているが、工程が多く経済的に効率が悪く、しかも職場環境上に問題があった。
■ 鏡面性を有する板、シート、フィルムと基材のラミネートは微妙な接着剤のダク、基材のダクの影響を受け、鏡面部材を得る為には板等を厚くせざるを得ず、且つラミネート加工適性が悪く経済的に効率の悪い部材しか得られない。
■ 基材の上に樹脂層だけを構成した場合、耐火性を付与するためには厚さが制限され、従って鏡面性も制限される。
【0005】
【考案が解決しようとする課題】
本考案はこのような課題を、表面の荒れている無機質材料、木質材料を基材とする表面が鏡面性を有する鏡面部材を提供することにより解決するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本考案は表面に鏡面性を有する合成樹脂層、金属層、合成樹脂層を順次積層してなるもので金属特有の高硬度により接着剤のダク、基材のダクを最小限にし、高温加工後の熱収縮、熱膨張に起因する表面ダク、反りを高熱伝導性、耐熱性によりなくした、耐火性の優れた鏡面部材である。
【0007】
以下図1、図2に従って本考案を説明する。
図1は本考案の一実施例を示すもので上から順に合成樹脂層1、金属層2、合成樹脂層3からなっている。図2は本考案の別の態様を示すもので、合成樹脂層1、金属層2、合成樹脂層3、基材層4からなっている。
本考案の合成樹脂層1、3に使用される合成樹脂は熱可塑性でも熱硬化性でもよいが、熱可塑性樹脂は塩化ビニル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂が好適である。特にラミネート加工性、耐火性の点から塩化ビニル系樹脂が望ましい。また、合成樹脂層1、3は各々単層でも二層以上の積層でも良く、表面の耐擦傷性を向上させたい場合はUV樹脂を予め塗布して用いてもよい。
また本考案で使用される熱硬化性樹脂はメラミン樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が好適で、鉛筆硬度、耐スクラッチ性等の表面物性を考えると、表層に熱硬化性樹脂層を用いるのが望ましいが熱硬化性樹脂を印刷紙等に含浸したタイプは、紙の地合のため鏡面性に欠けるので好ましくない。
【0008】
また、金属層2に用いられる金属は鉄、アルミニウム、銅等が挙げられ、耐火性、加工適性からアルミニウムが好ましく、厚さは耐火性及びラミネート、真空プレス等の二次加工適性を考慮すれば0.05mm〜0.3mm が望ましい。0.05mm以下の場合は積層の際の微細な異物や接着剤のダクを消去できない欠点がある。逆に 0.3mm以上の場合、曲面加工適性が低下する欠点がある。またアルミニウムは伸びを15〜30%保持している純アルミニウム系の1200、アルミニウム−マンガン系の3003、3004 で且つO(オ−)剤がより好ましい。
前記上部合成樹脂層の厚さは0.1 〜0.3mm が望ましく、鏡面性を増すためには合成樹脂層の厚さを 0.2mm以上にした方が高い意匠性が保持できる。
また、無機質材料または木質材料からなる基材層4の無機質材料はスレート板、タンカル板、石膏ボードなどが好適であり、木質材料はMDF、パーチクルボード、合板等が好適である。浴室など耐火性を要求される場合は無機質材料を使用し、内装関係の扉、テーブル等には木質材料が利用されている。
【0009】
本考案の鏡面部材は合成樹脂層と合成樹脂層の間に金属層を用いることにり、材料、接着剤のダクの影響を受けず、鏡面性を保持し、且つ耐熱性と耐火性能の優れた鏡面部材を提供できる。
そのため、必ずしも接着剤の塗装による鏡面性を要求されず、許容範囲が広がり塗装管理が容易となる。
そのため基材表面を研磨等で仕上げる工程がなくても鏡面性が得られる。
【0010】
【実施例】
以下図1、図2により実施例を説明する。
(実施例1)
第一層を硬質塩化ビニル樹脂層(厚さ 0.1mm)、第二層を印刷シート(塩化ビニル製、可塑剤量16%)、第三層をアルミニウム箔(厚さ0.15mm)、第四層を硬質塩化ビニル樹脂層(厚さ 0.1mm)、第五層をスレート板とする構成において、第一層と第二層を予め熱ラミネートし、ラミネートした層を合成樹脂層1とし第三層のアルミニウム箔を金属層2とし、1と2を接着剤[武田薬品工業製、ポリウレタン系A−310/硬化剤A−3=12/1に配合]の塗布量25m2/g、ラミネート温度60℃でドライラミネートを行ない、さらにドライラミネートした合成樹脂層1と金属層2と第四層の合成樹脂層3の塩化ビニルシートとをドライラミネートして鏡面部材5が得られた。
鏡面部材5の裏面にスプレーで接着剤を塗布し、基材層4としてスレ−ト板(5mm)と積層し多段プレス(温度 160℃、圧力30kg/cm2)でステンレス鏡面板(通称艶板)により加工を行って本発明の別の鏡面部材6を得た。
【0011】
(実施例2)
実施例1と同様にして得た鏡面部材5をプレス加工(温度 160℃、圧力30kg/cm2)により鏡面加工を行い準備した。鏡面部材5の裏面にドクターナイフで接着剤を塗装した後、50℃で基材層4として木質材料とラミネート加工を行い、本考案の別の鏡面部材6を得た。
【0012】
(比較例1)
第一層として厚さ 0.4mmの塩化ビニル樹脂層、第二層として、裏面に実施例で示した接着剤層を設けた厚さ 0.1mmの印刷シート(塩化ビニル可塑剤量16%)と第三層として市販の厚さ5mmのスレート板を用いこれらを積層し、実施例で示したプレス条件で調製した。
(比較例2)
厚さ 0.4mmの塩化ビニル樹脂層と厚さ 0.1mmの印刷シートを多段プレスにより鏡面加工を行い、鏡面プレートを準備した。その裏面に実施例1で示した接着剤をドクターナイフで塗装し、次いで実施例2で示したラミネート加工を行って調製した。
実施例1〜2、比較例1〜2で得られた各部材について下記の鉄道車両燃焼性試験を実施し表1の結果を得た。
[鉄道車両燃焼性試験]
B5判のサンプルを45°に傾斜させて保持し、燃料容器の底の中心が、サンプルの下面の中心の垂直下方25.4mm(1インチ)のところにくるように、コルクのような熱伝導率の低い材料の台に乗せ、純エチルアルコ−ル0.5 ccを入れて着火し、燃料が燃えつきるまで放置して、不燃性の評価をした。
【0013】
【表1】【0014】
【考案の効果】
本考案は鏡面性、耐火性の優れた無機質材料、木質材料を基材とした鏡面部材を提供するもので、即ち、金属特有の高い硬度により接着剤のダク、基材のダクを最小限にし、加工温度が高いために生ずる熱収縮、熱膨張から起因する表面ダク、反りを高熱伝導性、耐熱性により防ぎ、且つ耐火性の優れた高い鏡面性を保持できる鏡面部材が得られる。
- 【登録番号】第3007877号
【登録日】平成6年(1994)12月7日
【発行日】平成7年(1995)2月28日
【考案の名称】鏡面部材
- 【出願番号】実願平6−10049
【出願日】平成6年(1994)8月15日
【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 亮一 (外1名)
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