刷本揃え装置
- 【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 多数の刷本からなる刷本束を立てた状態で支える支持腕部材と、この刷本束の両側を把持する一対の把持機構と、これらの支持腕部材と把持機構とを装架し、刷本束をその軸線を中心として所定角度回転させる回動機構と、刷本束の一側からこの刷本束中に空気を吹付けるノズルと、前記把持機構を振動させて刷本束を振動するバイブレータとを備え、前記把持機構のそれぞれは刷本束の厚さよりも大きな間隙を持つ把持部材を有し、この把持部材で刷本束を緩く把持することを特徴とする刷本揃え装置。
- 【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本考案は、多数の刷本からなる刷本束を揃える刷本揃え装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えばオフセット輪転機から排紙される刷本は、一側に折り目が形成され、他側には針代が形成されている。このような刷本は通常4乃至32頁の頁数を有し、順序通り重ね合されて背の部分を綴合わされ1冊の本にまとめられる。このような刷本をまとめて1冊の本とするの製本機は、所定の頁数とするために必要な刷本の数に対応する給紙装置を備え、これらの給紙装置は刷本の搬送路に沿って順に配置されている。各給紙装置は、それぞれ多数の刷本を内部に保持しており、所定の頁順に重ねられて搬送路に沿って送られてくる刷本の上に、内部に保持する刷本を一部ずつ給紙し、先に重ねられた刷本の上に重ねる。そして、所要頁を重ねられた刷本は背の部分を綴じた後、化粧断ちして完成される。
【0003】これらの給紙装置内に保持される刷本は、通常折り目側を下にした束状に並べられ、給紙機構により順に先端側から一部づつ抜出されて給紙される。この給紙装置内の刷本が減少した場合は新たに刷本を補給し、製本工程を中断することなく継続する。この給紙装置への補給は刷本の収容スペースが限られていることから、所定数づつ揃えた刷本束として行われる。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】しかし、刷本はその1つ1つの厚さが薄く、撓みやすい。このため、所定数まとめた刷本束とした状態でも、これを立てた場合に全体が座屈し、所定数まとめて揃えることが困難である。
【0005】本考案は、上述に鑑みてなされたもので、所定数の刷本を効率よく揃えることができる刷本揃え装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本考案の刷本揃え装置は、多数の刷本からなる刷本束を立てた状態で支える支持腕部材と、この刷本束の両側を把持する一対の把持機構と、これらの支持腕部材と把持機構とを装架し、刷本束をその軸線を中心として所定角度回転させる回動機構と、刷本束の一側からこの刷本束中に空気を吹付けるノズルと、前記把持機構を振動させて刷本束を振動するバイブレータとを備え、前記把持機構のそれぞれは刷本束の厚さよりも大きな間隙を持つ把持部材を有し、この把持部材で刷本束を緩く把持することを特徴とする。
【0007】
【作用】この刷本揃え装置によれば、多数の刷本からなる刷本束の下縁部が支持腕部材上に載置されかつこの両側縁部がそれぞれ把持機構に把持される。この後、回動機構を作動して刷本束がその軸線を中心として所定角度回転される。この刷本束は把持機構の把持部材で緩く把持され、バイブレータで振動されつつノズルから空気を吹付けられる間に、各刷本の縁部が揃えられる。
【0008】
【実施例】図1は刷本揃え装置10の概略を示す。この刷本揃え装置10は例えばロボットアームとして形成された支持台12に、回動機構14を介して取付けられた回動腕部材16を備える。この回動腕部材16の両端には多数の刷本からなる刷本束8を把持する把持機構18,18が装架されている。また、回動腕部材16にはその長手方向に沿うガイドレール20,20が設けられており、把持機構18,18はこのガイドレール20に沿って移動可能な移動ブロック22を備える。この移動ブロック22,22はそれぞれ回動腕部材16に装架された駆動モータ26,26によりボールねじ24,24を介して駆動され、ガイドレール20,20に沿って所要位置に移動される。更に、この移動ブロック22,22には、刷本束8の下縁部を支える支持腕部材28,28が取付けられている。本実施例では、この支持腕部材28,28は屈曲した丸棒状に形成されているが、この刷本揃え装置10に装架された刷本束8の下縁部を支えることができるものであれば、どのようなものでもよく、上記回動腕部材16あるいは他の適宜の部材に取付けることができる。
【0009】図2の(A)に示すように、移動ブロック22には刷本束8を把持する一対の把持部材30a,30bが対向して設けられている。これらの把持部材30a,30bは図2の(B)に示すように枢軸32の両端側に枢着されたリンク34a,34bに固定されており、この枢軸32はその中央部を移動ブロック22に支えられている。また、リンク34a,34bの先端部には作動シリンダ36,36のロッド端が枢着されており、各作動シリンダ36を伸張すると、把持部材30aは刷本束8に向けて閉じる方向に回動し、把持部材30bは刷本束8から離れて開く方向に回動する。作動シリンダ36を収縮した場合には、把持部材30a,30bがこれと逆方向に回動し、これらの作動シリンダ36の操作により、刷本束8の厚さに応じて好適に把持することができる。これらの把持部材30a,30bは図3に示すように、先端が幅広に形成されて刷本束8を均等に把持し、この刷本束8を把持するときの把持部材30a,30b間の間隙は、後述するように刷本束8を水平に配置したときすなわち各刷本を上下に重ねたときの厚さである自然状態の厚さよりも大きな間隙をもって刷本束8を緩く把持する。
【0010】更に、この刷本揃え装置10は図1に示すように、把持機構18の把持部材30を振動して刷本束8を振動するバイブレータ36a,36bと、装架された刷本束8の一側からこの刷本束8中に空気を吹付けるノズル38とを備える。
【0011】バイブレータ36a,36bは刷本束8に互いに逆方向の回転振動を与えるように配置されており、また、ノズル38は刷本束8の厚さ方向の全体にわたって均等に空気を吹付けるように配置される。このノズル38は必要に応じて1または複数個配置してもよい。
【0012】この刷本揃え装置10により刷本束8を揃える場合は次のように行う。
【0013】まず、図4および図5に示すように、刷本束8の下縁部を支持腕部材28,28上に載置し、その両側を各把持機構18の把持部材30,30間に把持する。このときの対向する把持部材30,30の間隙は図5の(B)に示すように刷本束8の自然厚さよりも十分大きくし、また、刷本の紙質すなわち印刷方法に応じて最適な値とする。例えば各刷本を上下に重ねたときの自然厚さが約50mmの刷本束8について、活版印刷された刷本束の場合はこの把持部材30,30間の間隙を約90mmとし、これよりも自重が大きく撓みやすいオフセット印刷あるいはグラビア印刷された刷本束の場合はこの間隙を約75mmとするのが好ましい。更に、刷本束8の側縁部と把持機構18の移動ブロック22との間にも間隙Sを設ける(図1)。
【0014】この後、図6に示すように、刷本束8の軸線Cを中心として所定角度α回転する。この回転角度αは約50〜55°程度とすることが好ましい。このように刷本束8を回転した状態では、刷本束8は図6の(B)に示す状態となり、刷本束8の座屈が抑制される。そして、このように刷本束8を回転した状態で、バイブレータ36a,36bを作動して刷本束8の両側から逆方向の回転振動を与え、更にノズル38からこの刷本束8中に空気を吹付ける(図4)。活版印刷された刷本の場合は約1〜2秒、グラビア印刷された刷本の場合は約30秒間程度空気を吹付けるのが好ましい。
【0015】刷本束8の各刷本が揃っている場合には、バイブレータ36a,36bを停止し、ノズル38から吹付ける空気も停止する。そして、回転機構14により逆方向に角度α回転し、図5に示す元の状態に配置し、刷本束8の揃え操作を終了する。揃えられた刷本束8は所要位置に排紙する。
【0016】一方、刷本束8の各刷本が揃えられていない場合は、バイブレータ36a,36bおよびノズル38からの空気噴出を停止した後、回転機構14により図5の位置に戻し、更に逆方向に角度α回転する。この状態で再度バイブレータ36a,36bを作動しかつノズル38から空気を吹付け揃え操作を行う。各刷本が揃えられた後、図5に示すように元の位置に戻し、揃え操作を終了する。
【0017】したがって、上記刷本揃え装置10によれば、極めて薄く撓みやすい刷本でも、これらの刷本束8をその軸線Cを中心として所定角度α回転することで刷本束8の座屈を抑え、更にバイブレータ36a,36bとノズル38から吹付ける空気とにより、刷本束8の座屈を防止しつつ各刷本を揃えることができる。更に、空気を吹付けることにより、刷本束8中の刷本が一部づつ分離され、給紙する際の給紙ミスを防止することができる。
【0018】
【考案の効果】以上明らかなように、本考案の刷本揃え装置によれば、撓みやすい刷本の束を短時間で確実に揃えることができる。
- 【登録番号】第2559546号
【登録日】平成9年(1997)9月19日
【発行日】平成10年(1998)1月19日
【考案の名称】刷本揃え装置
- 【出願番号】実願平4−68314
【出願日】平成4年(1992)9月30日
【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦
【審査官】 原 光明
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