トナー除去ペン
- 【要約】
【目的】 あらゆる紙質の用紙に定着したトナーを綺麗に見栄えよく除去することができるトナー除去ペンを提供することを目的としている。
【構成】 トナーを溶解または膨潤可能な液状化合物(A)とトナーを溶解しない液状化合物(B)と界面活性剤とが少なくとも混合されていて、液状化合物(A)が液状化合物(B)中に分散された除去剤を貯蔵する貯蔵部がペン本体内に設けられ、この貯蔵部から供給された除去剤を先端から滲出させて、用紙のトナー定着面に除去剤を供給するペン先がペン本体から突設されている構成とした。
- 【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】トナーを溶解または膨潤可能な液状化合物(A)とトナーを溶解しない液状化合物(B)と界面活性剤とが少なくとも混合されていて、液状化合物(A)が液状化合物(B)中に分散された除去剤を貯蔵する貯蔵部がペン本体内に設けられ、この貯蔵部から供給された除去剤を先端から滲出させて、用紙のトナー定着面に除去剤を供給するペン先がペン本体から突設されているトナー除去ペン。
【請求項2】除去剤が液状化合物(A)としての二塩基性カルボン酸ジエステルを15重量%以下と、グリコールモノエーテル類およびピロリドン誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の助剤を1重量%以上と、残部が界面活性剤および液状化合物(B)としての水とから構成されている請求項1に記載のトナー除去ペン。
- 【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、電子写真方式を利用した乾式複写機やレーザプリンタ等によって所定の原稿パターンのトナーが表面に定着したトナー定着済み用紙の表面からトナーのみを除去することができるトナー除去ペンに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式を利用して乾式複写機やレーザプリンタは、トナーを用紙の表面に定着させることによって所定の原稿を複写したり印刷したりすることがきるようになっている。
すなわち、トナーは、カーボンブラック等の顔料と、アクリル−スチレン共重合樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂と、電荷制御剤と、分散用界面活性剤等とを混練、粉砕,分級して調整され、トナー中の熱可塑性樹脂が加熱溶融されることで紙面に定着されるようになっている。
【0003】
したがって、一旦、複写や印刷された原稿パターンは紙面に強固に定着しており、保存性に優れている。
一方、一旦トナーが定着した原稿を修正するには、揮発性溶剤と白色塗料とを混合した修正液を修正部の上に塗布し、白色塗料によって修正部を上部から覆い、白色塗料の上に修正内容を書き入れる方法や、トナーを構成する熱可塑性樹脂を溶解可能な四塩化炭素やクロロホルム等の溶剤を主成分とする除去剤を修正部に塗布し、トナーを溶かして除去剤とともに、溶解したトナーを拭き取る方法などが一般的である。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
しかし、修正液を用いる方法では、修正部が白色塗料によってその厚みが厚くなるとともに、色付きの用紙を用いた場合、塗料の白色が目立って見栄えが悪い。
一方、従来の除去剤では、トナーを熱可塑性樹脂を溶剤で溶解するため、繊維質で含浸性に富んだ用紙を用いた場合には、溶解した熱可塑性樹脂が顔料とともに、繊維内に浸透してしまい、用紙自体を汚してしまう。したがって、溶剤を浸透させないOHP用用紙やトレーシングペーパーなどの特別な用紙を用いた原稿の修正にしか用いることができなかった。
【0005】
本考案は、このような事情に鑑みて、あらゆる紙質の用紙に定着したトナーを綺麗に見栄えよく除去することができるトナー除去ペンを提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本考案にかかるトナー除去ペンは、トナーを溶解または膨潤可能な液状化合物(A)とトナーを溶解しない液状化合物(B)と界面活性剤とが少なくとも混合されていて、液状化合物(A)が液状化合物(B)中に分散された除去剤を貯蔵する貯蔵部がペン本体内に設けられ、この貯蔵部から供給された除去剤を先端から滲出させて、用紙のトナー定着面に除去剤を供給するペン先がペン本体から突設されている構成とした。
【0007】
上記構成において、液状化合物(A)としては、たとえば、特に限定されないが、有機エステル化合物,有機炭化水素化合物,脂肪酸化合物,有機ケトン化合物,ハロゲン化炭化水素化合物,アルデヒド化合物,エーテル系化合物,複素環式化合物,アルコール化合物,有機窒素化合物,動物油,植物油およびそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0008】
有機エステル化合物としては、たとえば、酢酸エチル,オレイン酸エチル,アクリル酸エチル,メタクリル酸メチル,コハク酸ジブチル,フタル酸ジエチル,フタル酸ジブチル,酒石酸ジエチル,パルミチン酸ブチル,ジオクチルフタレート,α−アミノ酸エチル,L−グルタル酸エチル等の脂肪族エステル化合物およびこれらの誘導体、安息香酸メチル,リン酸トリフェニル等の芳香族エステル化合物およびこれらの誘導体、環式エステル化合物およびその誘導体、イソニコチン酸メチルなどの複素環式エステル化合物およびその誘導体、石炭酸化物(モンタンワックス酸化物)、石油酸化物などが挙げられる。
【0009】
有機炭化水素化合物としては、たとえば、白灯油,流動パラフィン,ヘプタン,ベンゼン,トルエン,シクロヘキサンなどが挙げられる。
ハロゲン化炭化水素化合物としては、1,1,1−トリクロロエタン,α−クロルナフタリン,メチレンクロライド等が挙げられる。
アルコール化合物としては、n−オクチルアルコール,n−デシルアルコール,ポリエチレングリコール,メチルセロソルブ,tert−アミルアルコール,フェノール,ベンジルアルコール,メチルベンジルアルコールなどが挙げられる。
【0010】
脂肪酸化合物としては、安息香酸,アルケニルコハク酸,ナフテン酸,オレイン酸,イソノナン酸などが挙げられる。
ケトン化合物としては、メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
アルデヒド化合物としては、ベンズアルデヒドなどが挙げられる。
【0011】
エーテル化合物としては、エチルエーテル,ジイソプロピルエーテル,オクチルフェニルエーテルなどが挙げられる。
有機窒素化合物としては、N,N−ジメチルホルムアミド,ジエチルアミン,アニリン,ジシクロヘキシルアミンなどが挙げられる。
また、これら有機化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上混合して用いることも可能である。
【0012】
一方、液状化合物(B)としては、水が一般的であるが、メタノール、エタノール、パラフィン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素等も挙げられる。
なお、特に好ましくは、除去剤として、液状化合物(A)としての二塩基性カルボン酸ジエステルを15重量%以下と、グリコールモノエーテル類およびピロリドン誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の助剤を1重量%以上と、残部が界面活性剤および液状化合物(B)としての水とから構成されているものを使用することが好ましい。
【0013】
二塩基性カルボン酸ジエステルとしては、特に限定されないが、たとえば、シュウ酸,マロン酸,アジピン酸,コハク酸,グルコン酸,クエン酸,酒石酸,フタル酸等の二塩基性カルボン酸の低級アルキルジエステルで、室温での水に対する溶解度が低いもの(実質的に1重量%以下のもの)が単独で、または2種以上混合して使用できる。
【0014】
また、二塩基性カルボン酸ジエステルの濃度は、15重量%以下であれば、特に限定されないが、5〜10重量%程度が特に好ましい。
グリコールモノエーテル類としては、特に限定されないが、たとえば、水に対する溶解度が大きい、エチレングリコールモノメチルエーテル,エチレングリコールモノエチルエーテル,エチレングリコールモノブチルエーテル,3−メチル−3−メトキシブタノール,ジエチレングリコールモノメチルエーテル,ジエチレングリコールモノブチルエーテル,プロピレングリコールモノメチルエーテル,プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールのモノアルキル(又はアリル)エーテル類(いわゆるセロソルブ類)が挙げられる。
【0015】
ピロリドン誘導体としては、特に限定されないが、たとえば、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
また、助剤の濃度は、1重量%以上であれば特に限定されないが、5〜20重量%程度が好ましい。
界面活性剤としては、除去剤の形態を水中油滴型分散形態にすることができるものであれば、特に限定されないが、たとえば、高級脂肪酸金属塩,アルキルベンゼンスルホン酸の一価金属塩,高級アルコール硫酸エステルの一価金属塩などのアニオン界面活性剤、アルキレンオキサイド付加型(又は付加なし型)の高級アルコールアルキルまたはアルキルエーテル,アルキレンオキサイド付加型の高級脂肪酸,アルキレンオキサイド付加型(又は付加なし型)のグリセリン,ソルビタン等の多価アルコールエステルなどの非イオン界面活性剤、第4級アンモニウム塩型,アミン塩型等のカチオン界面活性剤から選択され、中でもアニオン界1活性剤と非イオン界面活性剤ならびにそれらの混合物が好ましい。
【0016】
【作用】
上記構成によれば、トナー定着用紙の修正部にペン先を押し当て、修正部に擦るつけると、貯蔵部からペン先に滲出した除去剤が修正部を濡らす。そして、除去剤中の液状化合物(A)がトナーを構成する熱可塑性樹脂を膨潤または溶解するが、液状化合物(A)が液状化合物(B)によって囲まれているため、膨潤または溶解した熱可塑性樹脂および顔料等がガム状体になって用紙面から浮き上がる。そして、この浮き上がったガム状体を含浸性に富んだ布や紙で拭き取ると、修正部からトナーが綺麗に取り除かれる。
【0017】
【実施例】
以下、実施例により本考案をさらに詳しく説明するが、本考案はこれにより限定されるものではない。
図1は本考案にかかるトナー除去ペンの1実施例をあらわしている。
図に示すように、このペンAは、ペン本体1とペン先2とペン本体1の先端に装着自在になっていて、装着時にペン先2を覆うキャップ3とを備えている。
【0018】
ペン本体1は、除去剤4を充填したカートリッジ5が貯蔵部として内蔵されている。
カートリッジ5は、ペン先1と連通する連通部11を一端部からカートリッジ4内に臨ませることで、ペン本体1に装着自在になっている。また、連通部11がカートリッジ5内に臨ませられると、除去剤4が毛細管現象によってペン先2まで、滲出するようになっている。
【0019】
このペンAによれば、キャップ3をペン本体1から取り除き、図2に示すように、トナーが定着された用紙6の修正部61にペン先2を押し当て、修正部61上面を擦ると、カートリッジ5内の除去剤4がペン先2から修正部61表面を濡らし、図3に示すように、修正部61のトナー62を構成する熱可塑性樹脂のみが除去剤4中の液状化合物(A)によって膨潤または溶解される。しかし、液状化合物(A)が熱可塑性樹脂を膨潤または溶解しない液状化合物(B)内に粒状となって分散しているので、膨潤または溶融した熱可塑性樹脂は、顔料等とともに、用紙6表面からガム状になって浮き上がる。そして、このガム状体を浸透性に富んだ布や紙等で拭け、膨潤または溶融した熱可塑性樹脂が顔料とともに、用紙6内に浸透することなる用紙6表面から取り除ける。
【0020】
すなわち、このペンAによれば、あらゆる用紙に定着したトナーを用紙を汚すことなくきれいに除去することができる。また、ペンタイプであるので、非常に操作性がよい。
さらに、昨今のようにカラーコピーによる贋札や贋チケットの判定も簡単に行うことができる。
【0021】
(実施例1)
図1に示すペンAと同様の構造のペンのペン本体に下記配合の除去剤■がそれぞれ充填されたカートリッジを装着した。そして、このペンのペン先をポリスチレン−アクリル樹脂をバインダーとする黒色トナーを一面に定着させた坪数64g/m2 の紙の修正部表面にペン先2を押し当てながら 回前後させ、 秒間放置したのち、布で修正部表面を拭いたところ、ガム状になったトナーが修正部から綺麗に取り除かれた。
【0022】
除去剤■(O/W型) 二塩基性カルボン酸ジエステル(アジピン酸ジエステル17%,グルタル酸ジ メチル66%,コハク酸ジメチル17%) ・・・ 10重量% 3−メチル−3−メトキシブタノール ・・・ 10重量% 有機酸エステル硫酸化物 ・・・ 6重量% ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル ・・・ 1.4重量% ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル ・・・ 1.3重量% 水 ・・・ 71.3重量% (実施例2)
除去剤として下記配合の除去剤■を使用した以外は、実施例1と同様にして修正部のトナーを除去したところ実施例1と同様にトナーのみが綺麗に修正部から除去できた。
【0023】
除去剤■(O/W型) 二塩基性カルボン酸ジエステル(アジピン酸ジエステル17%,グルタル酸ジ メチル66%,コハク酸ジメチル17%) ・・・ 8重量% 3−メチル−3−メトキシブタノール ・・・ 8重量% 有機酸エステル硫酸化物 ・・・ 4.5重量% ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル ・・・ 1.0重量% ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル ・・・ 1.3重量% 水 ・・・ 76.9重量% (実施例3)
除去剤として下記配合の除去剤■を使用した以外は、実施例1と同様にして修正部のトナーを除去したところ実施例1と同様にトナーのみが綺麗に修正部から除去できた。
【0024】
除去剤■(O/W型) 二塩基性カルボン酸ジエステル(アジピン酸ジエステル17%,グルタル酸ジ メチル66%,コハク酸ジメチル17%) ・・・ 5重量% 3−メチル−3−メトキシブタノール ・・・ 5重量% 有機酸エステル硫酸化物 ・・・ 3重量% ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル ・・・ 0.7重量% ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル ・・・ 0.8重量% 水 ・・・ 85.5重量% (実施例4)
除去剤として下記配合の除去剤■を使用した以外は、実施例1と同様にして修正部のトナーを除去したところ実施例1と同様にトナーのみが綺麗に修正部から除去できた。
【0025】
除去剤■(O/W型) 二塩基性カルボン酸ジエステル(アジピン酸ジエステル17%,グルタル酸ジ メチル66%,コハク酸ジメチル17%) ・・・ 8重量% N−メチル−2−ピロリドン ・・・ 8重量% 有機酸エステル硫酸化物 ・・・ 4.8重量% ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル ・・・ 1.0重量% ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル ・・・ 1.3重量% 水 ・・・ 76.9重量% (比較例1)
除去剤として四塩化炭素を用いた以外は実施例1と同様にして修正部のトナーを除去しようとしたところ、トナーを構成する熱可塑性樹脂が溶解し、トナー中の顔料とともに、紙に浸透し、修正部のトナーを綺麗に取り除くことができなかった。
【0026】
(比較例2)
除去剤としてトルエンを用いた以外は実施例1と同様にして修正部のトナーを除去しようとしたところ、トナーを構成する熱可塑性樹脂が溶解し、トナー中の顔料とともに、紙に浸透し、修正部のトナーを綺麗に取り除くことができなかった。
【0027】
本考案にかかるトナー除去ペンは、上記の実施例に限定されない。たとえば、上記実施例では、貯蔵部がカートリッジ式になっていたが、ペン本体自体が貯蔵部となっていても構わない。
【0028】
【考案の効果】
本考案にかかるトナー除去ペンは、以上のように構成されているので、紙質を傷めることなく、トナー定着済み用紙からきれいにトナーのみを除去することができ、修正部を綺麗な仕上がりの見栄えのよいものにすることができる。
また、ペンタイプになっているので、操作性にも優れている。
- 【登録番号】第3000413号
【登録日】平成6年(1994)6月1日
【発行日】平成6年(1994)8月9日
【考案の名称】トナー除去ペン
- 【出願番号】実願平6−189
【出願日】平成6年(1994)1月25日
【出願人】
【識別番号】593186529
【氏名又は名称】有限会社ケントス
【識別番号】592180122
【氏名又は名称】ユニコ株式会社
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳 (外1名)
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