自動車用防犯装置
- 【要約】
【課題】本考案は、営業車の前部運転席におけるシートバックに、袋体の膨張に伴い後方へ向けて圧し開かれる開閉蓋を設けて、非常の際の上記袋体の膨張を支障なく行わせるようにしながら、上記開閉蓋の開放動作に伴う後部座席の乗客への上記開閉蓋の打撃による危害は極力防止できるようにした自動車用防犯装置を提供することを課題とする。
【解決手段】自動車の車室の内部において、運転席のシートバック内に形成された上部収納室2に膨張可能の袋体4が折り畳まれた状態で収納されており、バルブ6の開放動作に伴い、高圧ガスボンベ5から袋体4への高圧ガスの供給が行われて、袋体膨張状態4aにより強盗などの犯行の阻止が行われるが、下縁をヒンジ3aにより枢着された開閉蓋3が開放される際に、同開閉蓋3の上縁部3bがシートバック1の上縁に沿う丸みを有しているので、開閉蓋3による乗客への打撃は大幅に緩和される。
- 【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車室の内部において、前部の運転席のシートバック内に形成された上部収納室に、膨張可能の袋体が折り畳まれた状態で収納されるとともに、同袋体の内部にバルブを介し連通しうる高圧ガスボンベも上記シートバックの内部に設けられて、上記バルブを開くためのバルブ操作部材が上記運転席の近傍に設けられており、上記袋体の膨張に際して後方へ押し開かれる開閉蓋が上記上部収納室の後側開口部の下縁に沿うヒンジを介し装着されて、同開閉蓋の上縁部が上記シートバックの上縁に沿う丸みを付されていることを特徴とする、自動車用防犯装置。
【請求項2】
上記運転席のシートバック内において、上記の袋体およびガスボンベよりも前側に、上下および左右に延在する硬質板が介装されるとともに、同硬質板が上記シートバックの上部に装着されたピローの後側部まで上方へ延在した硬質板延長部を有して、同硬質板延長部により上記シートバックの上縁と上記ピローの下縁との隙間が塞がれていることを特徴とする、請求項1に記載の自動車用防犯装置。
【請求項3】
上記車室の窓ガラスの開閉を行う駆動モーター付き窓ガラス開閉機構と同窓ガラスの開閉状態を検知するセンサーとが設けられており、上記窓ガラスが閉じている場合には、上記センサーからの検知信号に応じ、上記バルブ操作部材の操作に伴って、上記バルブの開放動作よりもやや先行するように上記窓ガラスの開放動作を開始するための制御器が設けられたことを特徴とする、請求項1または2に記載の自動車用防犯装置。
- 【考案の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本考案は、タクシーなどの営業車に装備される自動車用防犯装置に関し、特に車室内の後部座席の乗客が前部運転席のドライバーに危害を及ぼす恐れを生じた場合に、折り畳まれた袋体を後方へ向け急膨張させて上記乗客を圧迫し、その間にドライバーの車外への避難を行えるようにした防犯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の後部座席からの犯罪に対抗するため、車内のセンターコンソールボックスの上部や前部運転席のシートバック(背もたれ)の後面側に折り畳まれたエアバッグを、インフレーターにより後部座席へ向け膨張させるようにしたものが開発されているが、エアバッグ収納室の蓋の開放機構については十分な開発が行われておらず、蓋が開く際に後部座席の人物に危害を及ぼす恐れがある。
また、後部座席の人物が刃物を用いて前部運転席のシートバックへ向けて突き出す動作を行った場合の対策については、全く配慮が施されていない。
【特許文献1】特開2003−252158号公報
【考案の開示】
【考案が解決しようとする課題】
【0003】
本考案は、営業車の前部運転席におけるシートバックに、袋体の膨張に伴い後方へ向けて押し開かれる開閉蓋を設けて、非常の際の上記袋体の膨張を支障なく行わせるようにしながら、上記開閉蓋の開放動作に伴う後部座席の乗客への上記開閉蓋の打撃による危害は極力防止できるようにした自動車用防犯装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前述の課題を解決するため、本考案の自動車用防犯装置は、自動車の車室の内部において、前部の運転席のシートバック内に形成された上部収納室に、膨張可能の袋体が折り畳まれた状態で収納されるとともに、同袋体の内部にバルブを介し連通しうる高圧ガスボンベも上記シートバックの内部に設けられて、上記バルブを開くためのバルブ操作部材が上記運転席の近傍に設けられており、上記袋体の膨張に際して後方へ押し開かれる開閉蓋が上記上部収納室の後側開口部の下縁に沿うヒンジを介し装着されて、同開閉蓋の上縁部が上記シートバックの上縁に沿う丸みを付されていることを特徴としている。
【0005】
また、本考案の自動車用防犯装置は、上記運転席のシートバック内において、上記の袋体およびガスボンベよりも前側に、上下および左右に延在する硬質板が介装されるとともに、同硬質板が上記シートバックの上部に装着されたピローの後側部まで上方へ延在した硬質板延長部を有して、同硬質板延長部により上記シートバックの上縁と上記ピローの下縁との隙間が塞がれていることを特徴としている。
【0006】
さらに、本考案の自動車用防犯装置は、上記車室の窓ガラスの開閉を行う駆動モーター付き窓ガラス開閉機構と同窓ガラスの開閉状態を検知するセンサーとが設けられており、上記窓ガラスが閉じている場合には、上記センサーからの検知信号に応じ、上記バルブ操作部材の操作に伴って、上記バルブの開放動作よりもやや先行するように上記窓ガラスの開放動作を開始するための制御器が設けられたことを特徴としている。
【考案の効果】
【0007】
上述の本考案の自動車用防犯装置では、後部座席の乗客が強盗などに変身した際に、運転者は急ブレーキをかけて停車の操作を行うと同時にバルブ操作部材を操作して上記バルブを開くことにより、高圧ガスボンベから袋体への高圧ガスの送給に伴って同袋体が後方へ急膨張し、これにより犯人を圧迫するが、その際、上記袋体の膨張により押し開かれる開閉蓋の上縁は、その収納室の後側開口部に沿うヒンジを中心として回動し、このようにして犯人に打撃を与える際に、同開閉蓋の上縁部が上記シートバックの上縁に沿う丸みを付されているため、重大な危害を加えることはなく、主として上記袋体による圧迫作用が行われるようになる。
【0008】
また、誤動作により上記袋体が急膨張する際にも、後部座席の通常の乗客に対する打撃は、最小限に抑制できるようになる。
さらに、運転席のシートバック内において、上記の袋体およびガスボンベよりも前側に、上下および左右に延在する硬質板が介装されていると、後部座席側から強盗などが刃物を運転席のシートバックへ突き立てても上記硬質板により阻止されるので、運転者まで上記刃物が到達するのを十分に防止することができる。
【0009】
そして、上記硬質板が上記シートバック上のピローの後側部まで上方へ延在した硬質板延長部を有して、上記シートバックの上縁と上記ピローの下縁との隙間が塞がれることにより、刃物などを挿入しようとする犯人の動作を予防することができる。
【0010】
さらに、上記車室の窓ガラス開閉のための駆動モーター付き窓ガラス開閉機構と同窓ガラスの開閉状態を検知する窓ガラスセンサーとが設けられて、上記窓ガラスが閉じている場合は、上記センサーからの検知信号に応じ、上記バルブ操作部材の操作に伴って、上記バルブの開放動作よりもやや先行するように上記窓ガラス開閉機構を作動させて上記窓ガラスを開き始めることにより車室内を外気に連通させる制御器が設けられている場合は、前記袋体の膨張による車室内の急激な気圧上昇で搭乗者の鼓膜が損傷するのを予防することができる。
【考案を実施するための最良の形態】
【0011】
自動車の車室内において、後部座席の乗客が運転席のドライバーを襲う場合、まず停車を指示し、ついで刃物などをドライバーに突き付けようとするので、これを防止するためには、車室内の空間を運転席側と後部座席側との間で仕切ることが望ましく、その仕切り板としては透明な硬質プラスチック製厚板が用いられる。そして上記仕切り板の中央部下縁と左右の前部座席間のセンターコンソールボックス上面との間には料金の受け渡しのための数センチメートル程度の高さの空間が形成される。
【実施例】
【0012】
図1は本考案の一実施例としての自動車用防犯装置を装着した自動車の要部横断面図、図2は図1のA−A矢視縦断面図、図3は上記装置の制御系を示すブロック図である。
図1,2に示すように、タクシー用の自動車の内部において、前部の運転席Sのシートバック1の内部に、後方へ開放させる上部収納室2が形成されており、上部収納室2の開閉蓋3は、上部収納室2の後側開口部の下縁に沿うヒンジ3aを介して装着されている。
【0013】
そして、上部収納室2の内部には、膨張可能の袋体4が折り畳まれた状態で収納されている。
また、上部収納室2の底部内に高圧の窒素ガスボンベ5が収容されており、同ボンベ5は電磁弁のごときバルブ6を介して袋体4に接続されている。なお、窒素ガスボンベ5としては、約200気圧の1リットル型ガスボンベなどが用いられる。
【0014】
図3に示すように、バルブ6の開放はバルブ操作部材7により制御器8を介して行われ、同操作部材7の配置は運転席Sの近傍とされる。
図1,2に示す開閉蓋3のヒンジ3aは、同開閉蓋3を閉鎖方向へ付勢する図示しないバネを装填されるが、鋼製また硬質プラスチック製の開閉蓋3の上縁を固定する面ファスナー9も、シートバック1の上縁部との間に設けられる。
【0015】
また、シートバック1の内部には、袋体4およびガスボンベ5よりも前側において上下および左右に延在する硬質板(例えば鋼板またはプラスチック板)10が装填されて、運転者を防護するように配慮されており、同硬質板10の上縁部10aは屈曲しながら上方へ延在して、シートバック1とピロー(枕)11との隙間を塞ぐように構成されている。
【0016】
さらに、車室の窓ガラス12の開閉制御を行えるように、図3に示す制御系が設けられている。すなわち、窓ガラス12の開閉を行う駆動モーター付き窓ガラス開閉機構13と窓ガラス12の開閉状態を検知する窓ガラスセンサー14とが設けられて、窓ガラス12が閉じている場合には、窓ガラスセンサー14からの検知信号に応じ、バルブ操作部材7の操作に伴って、電磁式のバルブ6の開放動作よりもやや先行するように窓ガラス12の開放動作を開始させる制御器8が設けられている。
【0017】
上述の本実施例の自動車用防犯装置では、後部座席Pの乗客が強盗などに変身した際に、運転者は急ブレーキをかけて停車の操作を行うと同時にバルブ操作部材7を操作してバルブ6を開くことにより、高圧ガスボンベ5から袋体4への高圧ガスの送給に伴って同袋体4が後方へ急膨張し、袋体膨張状態4aとなって、これにより犯人を圧迫するが、その際、袋体4の膨張により押し開かれる開閉蓋3の上縁は、その収納室2の後側開口部に沿うヒンジ3aを中心として回動し、このようにして犯人に打撃を与える際に、同開閉蓋の上縁部3bがシートバック1の上縁に沿う丸みを付されているため、重大な危害を加えることはなく、主として袋体4に圧迫作用が行われるようになる。
【0018】
また、誤動作により袋体4が急膨張する際にも、後部座席Pの通常の乗客に対する打撃は、最小限に抑制できるようになる。
さらに、運転席Sのシートバック1内において、袋体4およびガスボンベ5よりも前側に、上下および左右に延在する硬質板10が介装されているので、後部座席P側から強盗などが刃物を運転席のシートバック1へ突き立てても硬質板10により阻止されるので、運転者まで上記刃物が到達するのを十分に防止することができる。
【0019】
そして、硬質板10がシートバック1上のピロー11の後側部まで上方へ延在した硬質板延長部10aを有して、シートバック1の上縁とピロー11の下縁との隙間が塞がれることにより、刃物などを挿入しようとする犯人の動作を予防することができる。
【0020】
さらに、上記車室の窓ガラス12の開閉のための駆動モーター付き窓ガラス開閉機構13と同窓ガラス12の開閉状態を検知する窓ガラスセンサー14とが設けられて、窓ガラス12が閉じている場合は、窓ガラスセンサー14からの検知信号に応じ、バルブ操作部材7の操作に伴って、バルブ6の開放動作よりもやや先行するように窓ガラス開閉機構13を作動させて窓ガラス12を開き始めることにより車室内を外気に連通させる制御器8が設けられているので、袋体4の膨張による車室内の急激な気圧上昇で搭乗者の鼓膜を破損させるのを予防することができる。
【0021】
なお、自動車の車室内において、後部座席Pの乗客が運転席Sのドライバーを襲う場合、まず停車を指示し、ついで刃物などをドライバーに突き付けようとするので、これを防止するため、本実施例では車室内の空間を運転席側と後部座席側との間で仕切る透明な硬質プラスチック製厚板15が、上部止め具15aおよび下部止め具体15bを介して装着される。そして厚板15の中央部下縁と左右の前部座席間のセンターコンソールボックス上面との間には料金受け部18のための数センチメートル程度の高さの空間が形成される。
【産業上の利用可能性】
【0022】
ヒッチハイクの行われる地域では、レンタカーなどにも本装置を装備することが望まれる。
- 【登録番号】実用新案登録第3109663号(U3109663)
【登録日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【発行日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【考案の名称】自動車用防犯装置
- 【出願番号】実願2005−52(U2005−52)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】
【識別番号】505011741
【氏名又は名称】株式会社 南場運輸
- 【代理人】
【識別番号】100071401
【弁理士】
【氏名又は名称】飯沼 義彦
【識別番号】100089130
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 靖侑
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