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融雪体と積雪融解処理装置
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- 【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 三角柱または半円柱に構成されていると共に、加熱可能に構成されている適数本の融雪体単体(1A)を、当該融雪体単体の平らな面を下にして水平に並べ全体として鋸刃状の断面(1C)を形成し、かつ各融雪体単体の間に小隙間(1A1)を形成し、融雪時にこの小隙間に雪のつららが形成するよう構成されていることを特徴とする融雪体。
【請求項2】 融雪体単体(1A)は、鋼材、セラミックス等の耐久性、堅牢性のある材料で構成されている請求項1記載の融雪体。
【請求項3】 融雪体単体(1A)は、カーボン材をセメントで三角柱に固化すると共に、当該融雪体単体(1A)の角隅角部には保護丸鋼(1D)が配置され、又、当該融雪体単体(1A)の内部には、発熱線(1E)やシーズ線と、引っ張りに対する補強用丸鋼(1G)が配設されている請求項1記載の融雪体。
【請求項4】 地中(3A)に埋設された角型の筒状の積雪投入槽(3B)と、この積雪投入槽の下面開口部に融雪水を一旦受けるため地盤(3A1)上に置かれている受け皿(3C)と、積雪投入槽の上面開口部に張設されたグレーチング(3D)と、このグレーチングの上面に開閉自在に設けられた上蓋(3E)とから構成されている処理装置本体(3)の内部に、請求項1ないし請求項3のうちのいずれかに記載の融雪体(1)が、地盤(3A1)から上方にある程度浮かした状態で水平に設置されていることを特徴とする積雪融解処理装置。
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- 【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本案は、積雪地帯における積雪融解に好適な高融雪効率を保持する融雪体と、この融雪体を用いた積雪融解処理装置に関するものである。理想的な融雪方法とは、融雪に際し供給される熱エネルギーを無駄なく融雪に使用すること、要するに融雪効率を100%に極力近付けるための方法である。そのためには、融雪処理の際発生する融雪水の温度を可能な限りの安定した低温にすることである。本考案は、このようなことを実現しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】従来、この種のものにあっては、下記のようなものになっている。バーナーなどの熱エネルギーを直に積雪に与えて融解するか、又、積雪投入槽を設けて、投入された雪の融雪水をボイラー等で温め還流させて融雪水によって雪を融解する方法が一般的である。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】従来の技術で述べたものにあっては、下記のような問題点を有していた。これらの方法は、直接の場合は積雪量、又は投入槽の場合は積雪を投入する量とエネルギー放熱量とのバランスが崩れると、融雪水の温度が上昇したり、又、下降して融雪がスムーズに行えない。このことは、安定した低い融雪水温度を確保することができない原因となる。一般的にこれらの方法の融雪水平均温度は10〜5℃程度である。
【0004】本案は、従来の融雪方法の上記問題点の解決のために成されたもので、その目的とするところは次のような機能を持つ方法を提供しようとするものである。この考案は融雪装置により融雪する際の融雪水を低く安定した温度で発生させ融雪効率の向上を可能にしようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本考案のものは下記のようになるものである。すなわち、本願のものは、三角柱または半円柱に構成されていると共に、加熱可能に構成されている適数本の融雪体単体1Aを、当該融雪体単体の平らな面を下にして水平に並べ全体として鋸刃状の断面1Cを形成し、かつ各融雪体単体の間に小隙間1A1を形成し、融雪時にこの小隙間に雪のつららが形成するよう構成されている融雪体である。
【0006】この場合、融雪体単体1Aは、鋼材、セラミックス等の耐久性、堅牢性のある材料で構成することができる。また、融雪体単体1Aは、カーボン材をセメントで三角柱に固化すると共に、当該融雪体単体1Aの角隅角部には保護丸鋼1Dが配置され、又、当該融雪体単体1Aの内部には、発熱線1Eやシーズ線と、引っ張りに対する補強用丸鋼1Gを配設することができる。さらに、地中3Aに埋設された角型の筒状の積雪投入槽3Bと、この積雪投入槽の下面開口部に融雪水を一旦受けるため地盤3A1上に置かれている受け皿3Cと、積雪投入槽の上面開口部に張設されたグレーチング3Dと、このグレーチングの上面に開閉自在に設けられた上蓋3Eとから構成されている処理装置本体3の内部に、上記融雪体1を地盤3A1から上方にある程度浮かした状態で水平に設置することができる。
【0007】
【実施例】実施例について図面を参照して説明する。1は本案の融雪体である。三角柱または半円柱に構成されていると共に、加熱可能に構成されている適数本の融雪体単体1Aを、当該融雪体単体の平らな面を下にして水平に並べ全体として鋸刃状の断面1Cを形成し、かつ各融雪体単体の間に小隙間1A1を形成し、融雪時にこの小隙間に雪のつららが形成するよう構成されている。
【0008】なお、図4を参照して、融雪体単体1Aを三角柱とした場合で詳細を説明すると、三角隅角部を補強するため、保護丸鋼1Dが配置されている。融雪体単体1Aは、カーボン材をセメントで固化したもので、圧縮強度は200Kg/cm2程度発現する。融雪体単体1Aの内部には、斜面に沿って発熱線1Eが配線され、サーモスタット1Fが組み込まれている。又、引っ張りに対する強度増加のため、補強用丸鋼1Gが配設されている。
【0009】2は融雪体1を使用した積雪融解処理装置で、処理装置本体3と、この処理装置本体3内に装着された融雪体1とから構成されている。そこで、処理装置本体3は、地中3Aに埋設された角型の筒状の積雪投入槽3Bと、この積雪投入槽の下面開口部に融雪水を一旦受けるため、地盤3A1上に置かれている受け皿3Cと、積雪投入槽の上面開口部に張設されたグレーチング3Dと、このグレーチングの上面に開閉自在に設けられた上蓋3Eとから構成されている。
【0010】ついで、処理装置本体3内には、融雪体1が地盤3A1から上方にある程度浮かした状態で水平に設置されている。この場合、融雪体1を構成する融雪体単体1Aの両端は、積雪投入槽の内壁に固着した融雪体受け金具3Fで支持されている。図示の場合は、融雪体単体1Aを10本使用した例である。
【0011】融雪体1の熱エネルギーを発熱線(ニクロム線)1Eとし、電力は送電管3G内に通る電線によって発熱線1Eに伝わり、熱エネルギーとして融雪体1に供給される。積雪4は上蓋3Eを開け、グレーチング3Dを通して積雪投入槽3Bに投入される。このとき、熱エネルギーを融雪体1に供給すると積雪4の融解が始まる。定常状態においては積雪4は融解された分、自重によって沈降し、積雪4の一部はつらら4Aとなる。
【0012】融雪水4A1は、つらら4Aを伝って受け皿3Cで一旦受けられ、オーバーフローして地盤3A1に浸透する。つらら4Aは下方に成長しようとするが、ある程度の長さになると融雪水4A1による融解量と成長量がつり合うことになる。よって、つらら4Aは積雪融解終了迄、長さの安定した状態で存在し、最後は受け皿3Cに落下して融雪水4A1により融解される。
【0013】作用についてその詳細を説明する。融雪する際はこの融雪体上に雪を積むことになる。次に、これら融雪体に温水や電気発熱線などによって熱エネルギーを与えると融雪体上の雪はその熱エネルギーを吸収して融解を始める。このとき、融雪体上方の雪は融解した分、自重によって沈降する。
【0014】又、このとき融雪体単体間を沈降する雪は、熱エネルギーを吸収して完全融解して融雪水とならないまでも、その過程において自らの密度を上昇させるため体積収縮し融雪体単体表面から離れようとするが、全体として鋸刃状に融雪体単体が水平に並べられているので沈降するにつれて融雪体単体間の幅が狭まり、常に融雪体単体表面に接触しているか、あるいは融雪体単体表面との間に極微量の空洞4A2を発生しつつ、融解が行われる。このとき個々の融雪体単体のエネルギー放熱量が同じであれば、積雪の密度や温度に応じた安定した量の融雪が行われる。このことは、安定した量と温度の融雪水が発生するということである。
【0015】次に、融雪水をできる限り低温の状態で発生させる方法について述べる。積雪が定常状態で融解され融雪水となって排出されるメカニズムは再述するが、積雪は融雪体表面に接触、あるいは極微量の空洞を介在して熱エネルギーを吸収、体積収縮して密度が上昇し、融雪水(理論的密度は1ton/m3)となる。融雪水はその周辺の融解されつつある雪に吸収されたりするが、結局のところ融雪体底面下に落下することになる。
【0016】このとき、融雪体単体間には小隙間が在するので沈降する雪はその小隙間分だけ融解されず、その小隙間に雪のつらら(以後、つらら)となって存在している。よって、融雪体表面で発生した融雪水はこのつららを伝って落下することになるが、融雪水に残存する熱エネルギーはつららに吸収され0℃に近い低温となっている。又、同時に融雪水の熱エネルギーを吸収したつららは、その分融解してこれも0℃に近い低温の融雪水となって落下する。つまり、落下する融雪水は融雪体単体間の積雪とつららが融解したものである。
【0017】なお、つららの密度は、融雪水に近い値になっており、又、状態は多少固結したシャーベット状である。融雪水を0℃に近い温度で確保、安定して発生させるためには、つららを形成し、かつ、ある程度の長さ以上に成長させないことが肝心である。以後、融雪時において成長しようとするつららが積雪の融雪水によって融解され、ある程度の長さを保持している状態を「つららの定常状態という」。つららの定常状態の発生は、エネルギー放熱量、積雪の密度、融雪体の表面形状(鋸刃の形状)、融雪体単体間の小隙間が因子と考えられた。故に因子それぞれについて実験を行った結果、融雪体単体間の小隙間の多少がその因子となることが判明した。
【0018】エネルギー放熱量の多少は雪の沈降、つらら成長の速度に影響するが、融雪水量もその速度に比例する。故に、つららを融解させる速度も比例することになるから、つららの定常状態は発生する。次に、つららの密度は融雪水になる限界に近い密度になって安定している。積雪の密度は変化があってもつららの密度以上になることはない。
【0019】よって、前述したように、つららになる積雪は熱エネルギーを吸収して最終的につららの密度になるのであるから積雪状態での密度は、つらら定常状態の影響因子とはならない。鋸刃の形状やその大きさによって変わるが、積雪される融雪体単体の断面上で水平方向の間隔が鉛直方向に下降するにつれて狭まる形状であれば、つららはスムーズに形成されて積雪の融雪水が融雪体単体から直接落下することなく、つららを伝う。故に、つららの定常状態は発生する。
【0020】このことは、融雪体単体の断面形状が三角形、半円形、その他上述した「...狭まる形状−全体として鋸刃の形状」を形成するものであればよいということである。最後に、融雪体単体間の小隙間の多少はつららの影響因子となった。少ないとつららが形成されず、又、多いとつららの厚さが大きくなる。つまり、つららの量が多くなる。よって、積雪による融雪水のつららへの融解量とバランスがとれず、つららは成長し、つららの定常状態を発生させることはできない。よって、つららの長さが多くなり、成長する途中で自重によって中間から折れて着底し融解できずに堆積する結果となる。
【0021】なお、後記する実施例において、熱エネルギー(8Kw/h,2Kw/h→融雪体一本当り800w/h,200w/h)の量に係わらず、融雪体単体の小隙間が0.5cmのとき、雪のつらら長さは5cm程度で安定していた。又、融雪水温度も熱エネルギー量に係わらず、0.2〜0.5℃であった。
【0022】
【考案の効果】本考案は、上述の通り構成されているので次に記載する効果を奏する。図5は、融雪体1が雪4を融解処理している状況を表したものである。雪4は融解しつつ融雪体単体1A間が狭まる中を沈降するが、融雪体単体1A間にある程度の小隙間1A1があるので、融解されない雪4は図のようにつらら4Aとなって融雪体1の小隙間に発生する。雪4は融解され融雪水4A1となってつらら4Aを通して落下する。融雪水4A1は、空洞4A2が発生しても融雪体1の表面に落下することなく雪4を伝い、つらら4Aを融解しながら落下する。
【0023】よって、融雪水4A1の温度は限界近い低温となって落下する。つらら4Aは、ある程度成長すると融雪水4A1によって融解される量と成長する量とが均衡して、それ以上の長さにはならない。この実験においては、総熱エネルギーを変えて(8Kw/h,2Kw/h→融雪体一本当り800w/h,200w/h)2種類により行ったが、熱エネルギーの量に係わらず、融雪体単体1Aの小隙間1A1が0.5cmのとき、つらら4Aの長さは5cm程度で融雪終了まで推移していた。又、融雪水4A1の温度は0.2〜0.5℃の間にあった。
【0024】本案のものは、雪のつららを形成し、融雪体表面で発生した融雪水の残存熱エネルギーをつららに吸収させて積雪を安定した限界に近い低温の融雪水に変えて発生させ、熱エネルギーを無駄にせず積雪を融雪効率の高い状態で融解処理することができる。なお、本案の融雪体本体の材料については、上述実施の例に拘るものではない。本案の効果を発現できるものであれば良いのであるから、例えば、コンクリート、鋼材又は他の材料でも構わないものとなる。又、熱エネルギーの材料の種類にも拘らないことは無論のことである。このことについて例を挙げる。
【0025】図6はガスや灯油ボイラーによる温水によって融雪体単体に熱エネルギーを供給している例であり、図7はそのC−C線断面図である。ボイラー5によって温められた温水6は融雪体単体1AにU字型の温水管8を通る段階で熱エネルギーを供給して戻り水7となってボイラー5に戻る。これを繰り返すことによって積雪4は一部は融解され、又、一部は融雪体単体1A間に小隙間1A1があることからつらら4Aを形成し、最終的に融雪水4A1となる。
【0026】次に、図8はシーズ線を使用した例であり、図9はその平面図である。そしてこれらは、融雪体単体1Aの底面部を取り除き重量を軽くした例を示している。このようにしても積雪部は鋸刃の形状であるから何等問題は生じない。電線10に電力を通すとU型のシーズ線9は発熱し融雪体単体1Aに熱エネルギーが供給されるものである。また、積雪融解処理装置は上述した通りである。
- 【登録番号】第2512252号
【登録日】平成8年(1996)7月9日
【発行日】平成8年(1996)9月25日
【考案の名称】融雪体と積雪融解処理装置
- 【出願番号】実願平5−52882
【出願日】平成5年(1993)9月2日
【出願人】
【識別番号】000158389
【氏名又は名称】岩田建設株式会社
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】川成 靖夫
【審査官】 小野村 恒明
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